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Sunday, December 6, 2020

2020年東北海道DXペディションでキャッチしたアラスカ中波局

 2020年11月21日(土)から23日(月)にかけて、ベテラン中波DXerのシエスタさん、しんぞうさんの3人で、東北海道にて中波DXペディションを行いました。コロナ禍の中での実施ということもあり、常時マスク着用(外すのは食事の時だけ)、手洗い、うがいの徹底はもちろんのこと、宿も一人一部屋確保、食事は短時間で済ませる、アルコールは一緒に飲まない等コロナ対策を徹底した上での実施となりました。

 ペディションでは、受信アンテナとしてシエスタさん謹製の40m長のTDDF(D-KAZ)アンテナを利用し、分配器でアンテナ出力を分配し各自のSDRで収録、解析するという形を取っています。

 現在SDR、Perseusで録り溜めた約750GBに及ぶ記録ファイルを解析中ですが、期間中は、北米西海岸方面の中波局が日夜共に強力に入感していました。北米内陸部も、テキサス、ルイジアナの常連局が顔を元気に見せていた程度です。スペイン語局も多数捉えられていますが、IDの確認に苦労しています。どうやら北米東海岸中波局を狙う我々にとってはあまり嬉しくない伝搬となってしまったようです。

 それでも、ノイズレベルの本当に少ない環境下で、様々な北米中波局を受信できるのは、非日常の体験であり、大変面白いものです。

 記録ファイルの解析途中ではありますが、多くのアラスカ局が受信出来ていましたので、ここで紹介します。アラスカ局には関東でも受信が可能なKICYやKNOM等の超常連局がありますが、ここ東北海道では、関東では考えられないくらいの受信レベルで、かつ良好な音質での受信が可能です。特にKNOMにおいては、「アラスカの現地で受信したんじゃないのか?」と思われる程の良好な音質で受信できています。

 アラスカ中波局は現在、36局在しているようですが、そのうち24局についてはIDを確認、1局についてはインターネットストリーミングでのパラチェックで確認できました。

  この図は、アラスカの中波局の場所を示したものです(クリックすると大きく表示されます)。黄色は今回確認できた局、オレンジは推定局、水色は確認できなかった局となります。

Fig.1 アラスカ中波局の位置(画像クリックで拡大)

受信音を紹介します。青字コールサインをクリックすると別窓で音声ファイルが再生できます。
 送信電力は夜間の値です。どの局もIDはしっかり確認できますが、820kHzのKCBF(女性の声)は、同周波数のテキサス州のWBAP(男性の声)の混信を受けています。1170kHzのKJNPは、同周波数の韓国局HLSRの混信をかなり受けています。HLSRは送信電力500kWなのでこの混信は厳しいですね。

 KFQDのジングルはお馴染みですが、AMの周波数(750kHz)のジングルとは別のFMの周波数(103.7MHz)のジングルがあることも今回始めて知りました。(FMの周波数のジングルはこちら)

 720kHzのKOTZは、同局の放送スケジュールによると、週末の夜間は音楽をずっと流しているだけの様子で、IDの確認が出来ずに、インターネットストリーミングでのパラチェックで同局であることの確認にとどまっています。(ペディションに同行されたシエスタさんが、11/20(金)の18時にKOTZのIDを確認されています。音声ファイルを、ebbs-zettoにアップしていただきました。シエスタさんありがとうございます。)

 KBRWは世界で最も北に位置する北極圏の放送局です。今回2018年に引き続き2回目の受信が出来ました。
   
Date/TimeFreq[kHz]Station (Click)TX PowerCity
2020.11.21 15:00JST550KTGN
5kWAnchorage
2020.11.21 17:00JST590KHAR
5kWAnchorage
2020.11.22 03:00JST620KGTL
5kWAnchorage
2020.11.22 03:00JST630KIAM
3.1kWNenana
2020.11.22 03:00JST640KYUK
10kWBethel
2020.11.21 15:00JST650KENI
50kWAnchorage
2020.11.22 03:00JST670KDLG
10kWDillingham
2020.11.22 04:00JST680KBRW
10kWBarrow
2020.11.22 03:00JST700KBYR
10kWAnchorage
2020.11.22 01:00JST750KFQD
10kWAnchorage
2020.11.22 03:00JST770KCHU
9.7kWValdez
2020.11.22 04:00JST780KNOM
50kWNome
2020.11.21 19:00JST790KCAM
5kWGlennallen
2020.11.21 19:00JST820KCBF
10kWFairbanks
2020.11.22 03:00JST830KSDP
1kWSand Point
2020.11.21 17:00JST850KICY
50kWNome
2020.11.22 00:00JST890KBBI
10kWHomer
2020.11.22 03:00JST920KSRM
5kWSoldotna
2020.11.22 03:00JST930KNSA
4.2kWUnalakleet
2020.11.22 03:00JST970KFBX
10kWFairbanks
2020.11.21 15:00JST1020KVNT
10kWEagle River
2020.11.22 03:00JST1110KAGV
10kWBig Lake
2020.11.22 03:00JST1140KSLD
10kWSoldotna
2020.11.22 04:00JST1170KJNP
21kWNorth Pole

 さて、KFBXは、KFQDと同様のメロディのジングルを出していました。KFBXはFairbanksにある放送局ですが、だからK-FBXなんですね。(FBX=Fairbanks)アメリカの放送局のコールサインはその放送局がある街の名前が反映されているものが結構ありますね。例えば、今回の他のアラスカ局の中にも
   
KDLG      DLGはDillinghamの略
KBRW     BRWはBarrowの略
KNOM     NOMはNomeの略
KSDP      SDPはSand Pointの略
KSLD  SLDはSoldotnaの略
KJNP   NPはNorth Poleの略

といったようにコールサインも地元のリスナーに親しみが出るようなものに工夫されているようです。

 今回のアラスカ局は、15時台から19時台、そして深夜3時から4時台で良好に受信出来ています。11月22日(日)の午前3時半のアラスカと日本の夜間エリアの様子を調べてみると、アラスカの多くのエリアがグレイラインの中に含まれていました。このグレイライン(日出境界線付近)では、異常伝搬が起こり、信号レベルが上昇することがあることは昔から知られているところです。北米側で深夜から夜明けを迎えるグレイラインがかかることによる中波伝搬をTPDXでは、2次伝搬と呼ぶこともあります。(逆に日本が昼から日没を迎えるグレイラインがかかることによる伝搬を1次伝搬と呼ぶことがあります)

Fig.2 2020年11月22日午前3時30分の夜間エリアとグレイラインの様子
(画像クリックで拡大)
(アラスカがグレイラインの中に入っていることがわかる)

まだ解析途中ですが、面白い局等見つかりましたら、適宜このブログで紹介していきたいと思っています。