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Wednesday, January 19, 2022

最後のWRTHを読んで

世界でもっとも総合的で最新の放送ガイドとして多くの放送受信愛好者に利用されてきたWRTH(World Radio TV Handbook)が2022年版にて最後の出版になることがアナウンスされました。

私は毎年購入していたわけではなかったのですが、最後の出版ということもあり、昨年に引き続き購入しました。WRTH本部にインターネット経由で注文し、昨年12月31日に無事私の手元に郵送されてきました。私のここ数年の受信対象は海外中波DX局であり、中波DXをやる上でも、WRTHは一つのデータベースとして貴重な資料になっていました。短波放送による海外放送の減少、それに伴いリスナーも激減している現在において、出版ができなくなるのは時間の問題だったのでしょう。ただ可能であれば、多少値段が高くなってもいいので、オンライン版での復活を望みたいところです。



巻頭ページにはEditorialとして、出版責任者のニコラス・ハーディマン氏のコメントが書かれています。この2022年号が最後の出版になることがアナウンスされていましたが、最後のほうで、AirSpy社がさらに小型な受信アンテナに適した同社SDRのHF+の新タイプを開発中との記述がありました。どうやら小型アンテナの高い出力インピーダンスに対応するHF+が開発されているようだと、私は他のDXerの方から聞いております。

WRTHへの貢献者として、日本人のお名前が2名ありました。直接の面識はありませんが、これまでお疲れ様でしたとお伝えしたいです。

Icom IC-705からSangenのATS-909X2,TecsunのH-501及びPL-330、そしてATS25 Si4732のレビュー記事もありましたが、特段欲しいリグでもないので読むのは省略。特にATS25 Si4732は受信機としては大したことないようです。まあ見掛け倒しのおもちゃなんでしょう。

Cross Country Wireless(CCW)のループアンテナ用プリアンプLAA++はちょっと気になりました。性能について記載されていますが、出力でのインターセプトポイントの値が記載されており、これをどう読むかはピンときませんでした。入力でのインターセプトポイントの値も知りたかった(換算できるのでしょうか?)。また14MHzでの利得が25dB、そして雑音指数が0.79dBとありましたが、本当にこんなに小さい雑音指数が達成できているのか?とちょっと疑いの眼で見ているところです。

CCWのHPには面白いカージオイド特性の指向性を示す小型ループアンテナの記事があり、私はこちらのほうがとても気になってしまいました。今年追試したいと思っています。


http://www.crosscountrywireless.net/cardioid_loop_antenna.htm

Cross Country WirelessのHPから(http://www.crosscountrywireless.net/cardioid_loop_antenna.htm


今号の特集記事では、BBCのシニア送信エンジニアであるデイブ・ポーター氏によるHF帯の送信機の開発物語の記事がまず目に飛び込んできました。短波送信機の開発の歴史は、電力効率をアップする歴史だったようです。短波送信機の開発は1920年代に始まり、1960年代には電力効率は50%まであがったとのこと。1970年代には冷戦時代もあり、この時は、各国で短波放送の需要が大きくなり、300kW、500kWの送信機が数多く製造されたとあります。さらには送信用真空管の改良が行われ、さらに真空管から半導体アンプへの変遷、変調方式もパルスステップ変調(PSM)や、パルスウィズ変調(PWM)、の採用、そしてさらには、1973年のオイルショックの影響により、さらに効率の良い送信機の開発が行われ、それを実現するために、開発された変調度が浅い時に、搬送波を抑制するダイナミック振幅変調方式(DAM)、そしてイギリスBBCが採用した変調されていない時には搬送波をフルパワーで送信し、変調度が上がるにしたがい、搬送波の電力を下げていくDAMとは反対の振幅変調コンパンディング方式が開発されたとあります。
電力効率は、ありとあらゆる方法が投入されたおかげで現在は82%まで上昇しており、これにより、およそ100年の歴史を持つ高出力短波放送機の開発の歴史は終焉を迎えることになったとあります。短波放送送信機も行き着くところまで行ってしまったんですね。

”ラジオと共に75年以上”という記事の主人公、ウルマー・クィヴィック氏はネットで調べてみるとスウェーデンの作家、翻訳家の方で、特にアルバニア語のスペシャリストの方でいらっしゃるようです。(参考記事)今年で88歳になられるようで、この記事の中でウルマーさんのBCL人生が様々に語られています。私も88歳になっても健康で、アンテナ片手にDXingを楽しんでみたいなと思いますね。特に語学は英語力をさらに深化させるのと、ロシア語も日常会話ができるくらいにはなってみたいし、ハード、ソフト含めてまだまだやりたいことだらけだったりします。BCLは放送聴取を中心に、興味の対象が多岐に渡るため、飽きることがないですよね。

私にとってかなり興味を引いたのは、ビル・ウィトカー氏のVOAのテクニカル・モニタリングの記事です。ウィトカー氏はMW DXerでもあり、昨年、ZOOMを使ってオンラインで開催されたNASWA SWL FESTでは、アメリカ西海岸のGraylandからTDDFアンテナとRX888を使ってTPDX受信のライブ中継してくれました。日本のNHK秋田第2放送等のビッグガンステーション等の受信音を聞かせてくれました。
ウィトカー氏は、Voice of America に39年間勤務され、1987年から2020年までVOAのテクニカル・モニタリング業務をされていたとのことです。

この記事には、ウィトカー氏達VOAスタッフがVOAの海外諸国での受信状況をモニタリングするための手法の改善に向けた様々な苦労が詳細に記載されています。海外諸国のモニターと紙でやり取りしていた方法を、まずはスキャントロニクス(いわゆるマークシート方式)によるものに変更し、ワシントン側で、スタッフがそれを大型コンピューターに入力する方法に変更(かなり入力エラーに悩まされたようですが)さらにはマッキントッシュとハイパーカード、リアルオーディオのエンコーダーを組み合わせてRMS(Remote Monitoring System)を構築し、遠隔地からの受信サンプルを通信で取り寄せるいわゆる、現在我々がSDRでやっているリモート受信の先駆け(を行っていたことなどが書かれています。しかもこのテスト運用が1989年の4月から6月に起きた中国・天安門事件発生時、VOAの中国語放送にジャミングが中国によってかけられた時にテスト運用され、ウィトカー氏が毎朝急いでVOAの職場に出社して確認していたことなども書かれています。

ウィトカーさんが当時構築されたRMSシステム(同氏のHPから)

ウィトカーさんの古いホームページ(1995年当時)がまだインターネットで閲覧可能になっていますここをクリック ウィトカーさんの95年当時の写真もありました。手作り感満載のホームページですね。(実に懐かしいスタイル(笑)でも当時はみんなこうでした。)

また、当時のRMSについても記事もありました。movファイルですが、音声も聴くことができます。必見ですここをクリック

このRMSを1991年当時にウィトカー氏達は、世界75箇所に設置したということですから、私は、相当VOAは予算も潤沢でかつ先進的なことをしていたんだなあと思いました。

また、さらには、海外の視聴者モニター達とのやり取りも、 アップルのニュートンというメッセージパッドとモデムを使ってコンピューター通信でできるようにし、1991年にソ連が崩壊した後には、VOAはRadio Free Europe とRadio Liberty ののネットワークと中継局、前ソ連に在住していた多くの聴取者モニターを受け継ぎ、このモニター達にサンクトペテルブルグの会合でこのニュートンによる新システムの紹介をしたっていうんですから、このウィトカー氏を始めとするVOAの実行力・機動力は恐るべしですね。

左がニュートン、右がiphone 


さらにRMSはRMS IIに進化し、遠隔地での受信にはDRAKEのR8が使われたと書かれています。RMS IIでは、30分おきに自動で受信音サンプルが通信回線でワシントンに集められ、記録媒体に収録されたのちWebページ上で閲覧可能になったとのことです。これが1998年頃の話ですから、凄い話です。
モニターに使われた受信機 DRAKE R8

2001年には、中国からVOAの中国語ウェブページが閲覧できない状況になっているという報告が入ったことから、ウィトカー氏達は、中国国内に設置したRMSにプログラムを組み込んで、特定の時間帯に、そこからVOAの中国語ウェブページにアクセスさせ、アクセスできない場合はtracerouteを実行してどのようにブロックされたかを把握してたらしく、ウィトカー氏いわく、「中国国内で特定のウェブページが閲覧がブロックされていることを我々はいち早く確認できた。」そうです。ウィトカーさん、エキサイティングな仕事してたんですね。

そしてこのRMSも、それまで受信機として使っていたDRAKE R8とIcom R-71からPythonでベースのRMSとSDR-IQに変わり、そして記録媒体もGoogle クラウドプラットフォームに置き換わっていったそうです。そしてウィトカー氏の最後の仕事として、ウィトカー氏はRMSのデバイスをipadに置き換えされたとのことです。ウィトカー氏はこうしてVOAの放送モニタリングの自動化に大変貢献されました。

モニター用受信機はSDR IQへ(小さいですね!)

KTWR Guamの記事も興味深かったです。KTWRでどのように送信機を調達して、メインテナンスしてきたかなどが詳細に書かれていました。DRMサービスのために再整備された250kWの送信機2台を購入して旧送信機を更新し、旧送信機をテネシー州のWTWWに売却した話や、放送を休止せずに送信機の更新工事を行った等、送信技術者他スタッフの皆さんのご苦労は予算面や、施工面で相当あったのだろうと思いました。

レソト共和国のラジオ局の歴史ついての記事も興味深く読みました。なかなかこういった放送局の記事を目にすることは無いので、WRTHの存在意義はこういうところにもあったのだろうなと思うと今回の廃刊(休刊と言いたいですね)は残念です。


Wednesday, January 5, 2022

趣味としてのBCLを自分なりに俯瞰してみる

 日頃、こんなことは考えていなかったのですが、年末年始休暇が少し長くとれたこともあり、ぼんやり考えてみました。ただぼんやりしているだけでは、明確化できないので、オンラインのマインドマップ作成ツール”mind meister"を使って自分なりに俯瞰を試みてみました。上手く分類できないところや、分類の粒度のレベルがあっていないところもあろうかと思いますが、あえて載せてみます(クリックすると大きくなります)。まあ、今後もBCL(BroadCasting Listener)を趣味として味わっていこうと思っているので、ここで一旦、自分の趣味としてのBCLでやっていることをの棚卸しをして俯瞰してみようというわけです。


自分なりに作って眺めてみると、BCLの世界は基本的には昔から変わっていないと感じています。ただインターネットが台頭し、情報の伝わり方、交流の仕方、そして放送番組の伝わり方に大きく影響があったのは周知の事実です。

色で塗りつぶしている部分は、私が興味を強く持っている部分です。こうしてみると私は、放送番組を楽しむというより、アクティビティは別として、DX局の受信(検出)、電波伝搬の検討、そして、それを実現するためのハードウェア(アンテナ、受信機、関連機器の特に自作の部分)の分野に興味を持っているBCLということになります。まあ日本国内では超・超ニッチな世界だと思います。

しかし、全世界を対象とすると、同様な志向をもっていらっしゃる方々は大勢います。当然日本語だけではコミュニケーションできないケースがほとんどですが、現在は工夫さえすればコミュニケーションの障壁は相当に低くなっていると思います。

またこのマップに描いてはみたものの、すでに今となっては、ほとんどどなたもやっていない分野(廃れてしまった分野)もあろうかと思います。また私にとっては全く興味がない分野もあります。(※やることを否定しているわけではないので念の為。)

また、先に基本的には昔から変わっていないと感じているとは書いたものの、BCLの世界も細かい部分で分岐が多くなっています。(必ずしも上のマップには書ききれていません)インターネットの普及で同じテーマであっても、その内側での、興味の対象・レベルのさらなる細分化、深化は趣味の世界では加速しました。BCLも同様だと思います。

もはやBCLを一括(ひとくくり)に扱うのには対象が広がりすぎた(一つのテーマもさらに細分化された)感があります。一括に捉えるのはなかなか難しいのではないかと思っているところです。

つまり、BCLをやっていますとなっても、お互いに全く趣向が合わないというケースも出てくると思います。しかしそこで泣き別れになるのではなく、お互いにお互いの好きなことを認めて耳を傾けて次に発展させるチャンスを待つくらいの余裕のある心は持ちたいものです。

また、「自分がBCLにどんなことを求めているのか?、何が楽しいのか?」をきちんと伝えるという術(すべ)は持っていて損はしないと思います。ただ「やろうよ、やろうよ。楽しいよ。」では、特に新しく興味を持った人には伝わらないと思っています。

私がこの趣味に求めている「根本」はなんなんだろうと自問した時に、出てきた言葉は「非日常性(意外性)」です。苦労の末、「おっ」と驚くような非日常を電波伝搬の不思議な世界の中で経験・体験をすることで自分の頭の中の日頃のモヤモヤがリセットされるような感覚を、大自然の中でのDXペディションに出かける度に感じます。自分を取り戻すという感覚でしょうか。私にとってBCLという趣味はその「非日常性」を味わせてくれる趣味の「一つ」となっています。また感覚的には、海釣りで珍しい魚を釣り上げる感覚に似ていると思っています。

長々駄文を書いてしましました。

皆さんにとってBCLとは何でしょうか? どうしてBCLという趣味を楽しんでいらっしゃるのですか?

今年もよろしくお願いします。

Monday, January 3, 2022

昨年11月の東北海道中波DXペディションにおける北米東海岸中波局WBZの受信報告

ここしばらくの間、本業がとても忙しくなってしまい、ブログのアップデートが出来ずじまいでした。昨年11月20~23日にシエスタさん、しんぞうさん等と東北海道のオホーツク沿岸で中波DXペディションを実施しました。北米方面の伝搬コンディションは必ずしも良いとは言えないものでしたが、11月20日(土)16時~17時にかけて北米東海岸マサチューセッツ州ボストンのWBZ(1030kHz 50kW)の受信をすることができましたので、紹介させていただきます。

WBZの受信は2018年の同時期の受信に引き続き、私にとっては2度めの受信となりました。北東方向に仮設した450m長のビバレージアンテナの効果もあってかなり長時間の間、フェージングを伴いながらも良好に受信することが出来ました。北米東海岸中波局の受信はとても難しく、その受信チャンスも中々巡って来ないため、今回の受信は大変嬉しいものでした。

DXペディション中の一コマ(窓で赤く点灯しているのは時刻同期用GPSアンテナ)

同日、私もメンバーになっている戸塚DXersサークルの有志の皆さんが岩手三陸沿岸部で中波DXペディションを実施しており、そこでも、40m長のTDDF(D-Kaz)アンテナによりWBZを受信に成功しました。お互いにLINEのチャットで連絡を取り合いながらのWBZ受信はとてもエキサイティングなものでした。

11月20日の16時における伝搬ルートの日照状況は以下のとおりです。東北海道沿岸部はグレーラインに入ったところ、そして岩手三陸沿岸部はグレーラインに入る直前の状態です。いわゆる一次伝搬(に近い)と呼ばれる状況です。どちらも、電離層の最終反射点(夜間の部分)であるコントロールポイントはそれぞれの受信点から伝搬路前方に位置しているため、受信地点が夜間ではなくとも電離層反射波が到来できる状況にはあったと考えられます。


11月20日のAEindex速報値は次のグラフの通りです。日本時間16時はUniversatl Time (UT)で7時となります。2018年の時よりも若干線が太いですが、暴れている様子はありません。北極圏のオーロラ帯は静穏だった様子が伺えます。(※AEindexは強いオーロラが出ると盛大にグラフが暴れます。北米東海岸中波局が日本で受信された時間帯のAEindexは、私が調べた限りでは全てグラフはほぼ直線に近い状況(静穏)であったことがわかっています。)

(http://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/ae_realtime/202111/index_20211120-j.html)

まずは16時の正時に聞けたWBZのIDが出る様子はこちらの動画になります。IDは”WBZ Boston WXKS FM - HD2, Medford and Iheart radio station. Now, more than ever, it matters where you get the news, (WBZ News Radio)". と出ています。カッコ内は、フェーディングで弱くなってしまい微かに空耳レベルで聞こえている部分です。


参考までに、インターネットストリーミングで得られたWBZの同IDの音声も取り上げておきます。当然こちらはフェージングも無くクリアです。両者の比較から先の動画でお聞かせした受信音が紛れもなくWBZのものであることははっきりわかるかと思います。

WBZのID部分(インターネットストリーミング)

次に、東北海道沿岸部での受信音と、岩手三陸沿岸部での受信音の比較をしてみたいと思います。まずは、TDXCメンバーのシンさんが、Youtubeにあげてくださっている岩手三陸沿岸部での受信音です。40m長のTDDF(D-Kaz)アンテナでの受信となります。

岩手三陸沿岸部での受信音(ANT: 40m TDDF)

男性のトークがサイドからの混信を受けながらも長時間聞こえていることがわかります。
混信が強いものの、良く聞くと開始35秒で”WBZ Boston News Radio"とアナウンスが出ていることがわかります。また開始1分30秒でもWBZ..と聞こえています。この言葉が取れてただけでも、WBZの受信であると断言してもいいと思いますが、ただいかんせん信号が弱いこと、さらには混信が激しいことから、男性トークが弱くなっているところは本当にWBZなのか?という疑問もわくかもしれません。これについては、検証結果を後ほど紹介します。

次に、東北海道沿岸部でのほぼ同時間帯の受信音です。両音声の同期はほぼ取れています。(若干の時間のズレが両男性トークが同じものであるかどうかの検証に有効になります)

東北海道沿岸部での受信音(ANT:450m ビバレージ)

こちらの受信音でも、開始35秒で”WBZ Boston News Radio"とアナウンスが出ていることがわかります。また開始1分30秒でもWBZ..と聞こえています。岩手三陸沿岸での受信音と比較して、こちらはかなりクリアな受信音です。同周波数1030kHzには、通常はワイオミング州のKTWOがおり、フェージングにより、そちらと途中入れ替わることも想定しなければならないのですが、この男性トーク及び、途中入るローカルコマーシャルを聞く限りは、この時間帯はWBZが連続して聞こえていたと判断しても良いと思います(ローカルコマーシャルについては別途聞き取りをおこなってみます)。また、受信ロケーションの差もあったのかもしれませんが、この受信状況の差は、受信アンテナによるものが支配的だったに違いないと私は考えています。

450mビバレージアンテナと40mTDDF(D-Kaz)アンテナの指向性パターンを比較します。
設定周波数は1MHzです。偏波は垂直偏波としています。赤線が450mビバレージアンテナ、青線が40mTDDF(D-Kaz)アンテナとなります。450mビバレージアンテナのほうが指向性が40mTDDF(D-Kaz)アンテナと比較して相当にシャープであることがわかります。

ビームパターンの違い

次にこらら2つのアンテナの受信利得を比較します。圧倒的に450mビバレージアンテナのほうがTDDF(D-Kaz)アンテナより26dBも利得が高いことがわかります。(※アンテナ利得はどちらもマイナスの値であることに注意。棒グラフの長さが短い方が利得が高い。)これら2つのアンテナの利得差はSメーター目盛り換算で4つから5つくらいの違いとなります。中波DXの微弱局の受信においてこの差は相当に効いてくるはずです。

アンテナ利得の違い

ほぼ完全なWBZのIDが確認できた東北海道沿岸部の受信音ですが、さらには16時9分36秒過ぎから聞こえてきたローカルコマーシャルを精聴してみます。私の個人的な感覚では、西海岸の英語とは違う雰囲気を感じます(なんだか早口ですよね)。以下の動画は、ペルセウスの復調帯域の調整とPBTにて隣接チャンネルのカブりを除去したものです。


ローカルコマーシャルを精聴すれば、同コマーシャルがWBZからのものであるかの判別に役立ちます。なんだか、家のカーペットについて話をしているようです。このコマーシャル中、(978)263-2302(twenty-three-O-two)の番号が聞き取れました。早速インターネットで検索です。すると、このサイトがヒットしました。予想通りこの番号は、マサチューセッツ州内のもので、カーペットを販売している会社のもののようです。またオーナーはJoe Paolini氏となっています。確かに、コマーシャル冒頭でMy name is Joe Paolini..と言っていますね。さらにこのサイトからたどると、Post Road Carpet One という会社のホームページにたどりつきました。コマーシャル中、頻繁にこの言葉は出てきます。


耳に痛いノイズが頻繁に入るし、私な英語ネイティブではないので、全部はとても私には聞き取れないのですが、推定含めて聞き取りをおこなってみました。以下がその結果です。聞き取れなかった部分は、ニューヨーク在住のアメリカ人の友人に追記・修正をお願いしました。Demitiri-san Thank you very much!

My name is Joe Paolini. My family has owned Post Road Carpet One in Acton for over 44 years.
When you walk in our  18,000 square foot show room.  
We will help you find the right  flooring to make your home of reflective of your personal style.  
Hard wood, (      )carpeting , aria rug, luxury vinyl tile, Hunter Douglas blinds, and much much more.
Mention you heard this ad on WBZ and you'll be receiving additional 10% off material. 
We have it all. Come and visit us at postroadcarpetoneofacton.com. 
Or give us a call at (978)263-2302(twenty-three-O-two). 
Post Road Carpet (      )you made a right decision. 
Post Road Carpet made truly in Acton. More than just a great (           ) carpeting,
It's the great design center.
Post Road Carpet is COVID confinement (or compliant).

黄色の下線部注目ですこのWBZのコマーシャルを聞いたといえば、10%オフで商品を購入できるって言っています。このコマーシャルはWBZで流れていたと考えて間違いありません。最後の、”Post Road Carpet (One), COVID confinement.”はこのコロナ禍の中の特徴的なフレーズで、ポストロードカーペットワンは、コロナ対策(封じ込め)を行っています。という感じの意味なのでしょう。こういう聞き取りはインターネットでの検索も含めてとても楽しいですね。

最後になりますが、岩手三陸沿岸部での受信音と東北海道沿岸部での受信音をほぼ時刻同期をとった状況で同時に再生してみます。具体的には、ステレオ録音とし右(R)チャンネルには岩手三陸沿岸部での受信音、左(L)チャンネルには東北海道沿岸部での受信音を収録しています。録音・再生ツールにはAudacityを利用し、途中、マウスを使って再生チャンネルを左チャンネル単独、右チャンネル単独に固定することを数回繰り返してみます。ヘッドフォンを使って聴いていただくとはっきりとわかりますが、ステレオ状態で聴いた時には、男性トークにエコーがかかったように聞こえるはずです。これは収録時に完璧に時刻同期が取れておらずわずかに時間差がついた状態で録音されており、さらには両チャンネルの男性トークが同じものであることを示しています。つまり、このことからも、岩手三陸沿岸部で受信されたこの男性トークはWBZからのものであると断定できます。



大自然の中でのMW DXペディションは、都会の喧騒(盛大な外来ノイズ)から遠く離れて、シーゲインをフルに得られる環境で受信ができること、また空気の美味しさ、自然の美しさを満喫でき、非日常を体感できるので、とても気に入っています。まあ重量物となるアンテナや受信機の持ち運び、さらには深夜、早朝まで及ぶワッチは大変体力を消耗し、またポケットマネーも結構使うことになりますが、それだけをやる価値は十分にあると思っています。ぜひまた行きたい!