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Sunday, May 2, 2021

電流帰還型オペアンプLMH6702を用いたトランスインピーダンスアンプの製作(1)

 ゴールデンウィークとなり、仕事のことを忘れて好きなことに時間を費やせるようになりました。昨年の11月頃に電流帰還型オペアンプTI社製LMH6702を使った中波DX用のSAL(Shared Apex Loop)アンテナ用のトランスインピーダンスアンプ(ループアンテナから出力される電流を電圧に変換するアンプ)を試作していたのですが、試作1号機は残念ながら異常発振を起こしてしまい、所望のトランスインピーダンスアンプとしての十分な動作が得られず、そのまま本職が忙しくなってしまい、さらにDXペディションも終わってしまったため、この試作機は、机の片隅に追いやられてしまいました。LMH6702は表面実装タイプのオペアンプであるため、そのサイズはとても小さく、老眼の私にとって基板上への取り付けはかなりの苦労を強いられたこともあり、その結果やる気がなくなり(苦笑)時間がだけが経っていったというのが正直なところです。

Fig.1 試作1号機(異常発振に悩まされた)
Fig.1 試作1号機(異常発振に悩まされた)


 年が明け、中近用の老眼メガネに加えて、パソコン作業やデスク作業用にと、近近用のメガネを新たに作ったところ、お陰様でデスク作業での疲れが半減しました。長時間本を読んでも疲れなくなりました。そしてようやく今回、再びチャレンジをする気力が湧いて来た次第です。

 LMH6702は、電流帰還型のオペアンプであるゆえ、その動作は電圧帰還型とはちょっと振る舞いが違います。電圧帰還型のオペアンプの場合は、+入力、-入力共に入力インピーダンスは大変大きく、理想的には電流は流れ込まないとして良いのですが、電流帰還型オペアンプの場合は、-入力は数十Ω程度しか入力インピーダンスがなく、電流が流れ込むことを逆に意識しなければならないこと等が違いとして挙げられます。電流帰還型オペアンプについて、Youtubeで大変わかりやすく解説してくださっている浜田智さんの動画があったのでご紹介させていただきます。電流帰還型オペンプによる、反転アンプの動作原理が理解できました。本当にありがたいことです。

 今日は、コロナ禍でもあるため、ずっと家に引きこもって、英文のLMH6702のデータシート等を読み漁っていました。データシートを読みますといろんなことがわかります、特にLMH6702の実装において注意しなければならないことを抜粋してみると、

  • 入出力端子付近にはGNDプレーン、電源プレーンは近づけないこと
  • 寄生容量が、帯域制限の原因となること
  • 電源ピンには高周波用デカップリング・コンデンサ0.1uFをLMH6702の電源ピンの直近に取り付けてGNDに落とすこと
  • フィードバック抵抗や入力に挿入する抵抗はLMH6702の入力ピンに最短距離で接続する、これら抵抗素子の反対側は、信号源あるいはグランドまでの接続距離は適宜長くすることは可能
  • フィードバック抵抗は273Ωの時がもっとも増幅帯域を広く取れる。この抵抗値より低いとピーキングが生じ、この抵抗値より高いと増幅帯域が狭くなる
こんなことが書かれています。基板に実装する際はこういったことに注意しなければなりません。試作1号もある程度は考慮していたとはいえ、例えば入出力端子付近にGNDプレーンを近づけないような配置にできたかというと、あまり自信がありません。また、入力ピンに最短で取り付けるフィードバック抵抗や電源ピン直下に取り付けるデカップリングコンデンサーもできるだけ小さいもの、表面実装タイプのチップ抵抗、チップコンデンサーがを使うほうがよりいいのでしょう。
 しかし、言うは易しだが行い難しとはこのことで、ユニバーサル基板上でこれをやろうとすると中々大変な作業になります。またGNDプレーンや信号線の引き回しをどのようにアレンジするのが適切なのか?も色々迷いが生じます。どこかにいい手本は無いものか?

 LMH6702のデータシートを読んでみると、評価用ボードの紹介がありました。手元にあるLMH6702はSOCタイプの8ピンICで、これを評価するボードがTI社から発売されていることを知りました。それがこれ、LMH730227です。大きさは約3.9cm四方です。

Fig.2 LMH6702(8Pin SOICタイプ)の評価基板LMH730227(表)
(IC周辺のGNDパターンは取り除かれている)


Fig.3 LMH6702(8Pin SOICタイプ)の評価基板LMH730227(裏)


Fig.4 LMH6702(8Pin SOCIタイプ)の評価基板LMH730227(データシート)

 パーツのネット販売で検索してみるとDigiKeyにて1枚1300円程度で手に入ることがわかったので、早速4枚注文しました。1週間程度で配達されるようです。8Pin SOICタイプのLMH6702のピン配置は次のようになっています。

Fig.5 8Pin SOICタイプのLMH6702のピン配置

6番ピンが出力で、その隣の7番ピンが+電源になっているのには閉口しました。しかし評価基板では基板の両面を使って、お互いの信号、電源線がぶつからないようになっていますし、またICチップ周辺のGNDプレーンは削られているようです。なるほどこのパターンを真似ればいいのか! 

GW中は時間が取れるので、ユニバーサル基板と銅箔テープを使って、この評価基板に似せた基板で回路を実装してみようと思います。評価基板が届きましたら、評価基板で作ったものとの性能評価の比較をしてみたいと思います。

Friday, April 2, 2021

NICTがリリースした短波帯電波伝搬シミュレータ(HF-START)を触ってみた

2021年3月24日に国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が、任意の2地点間の電波伝搬経路をリアルタイム宇宙天気情報に基づき提供することを可能とする短波帯電波伝搬シミュレーター(HF-START HF Simulation Targeting for All user's Regional Telecommunication)をスタートさせました。そのサイトはこちら

さっそくサイトにアクセスして使ってみました。まだ若干動作が不安定で計算結果がエラーになる等の不具合があるようですが、過去の電離層電子密度分布を使って過去の電波伝搬の様子をシミュレーションすることも可能なようです。

計算に使われる電離層電子密度分布は、GNSSトモグラフィー、 GAIAモデル、および、IRIモデルがあり、

  • GNSSトモグラフィー 観測に基づく日本上空の電子密度分布
  • GAIAモデル 全球大気圏・電離圏モデルから求めた電子密度分布
  • IRIモデル 広く用いられている電離圏経験モデル。IRI-2016をHF-STARTでは使用

とのことです。まだ私もこの辺は門外漢であるため、HF-STARTのWebサイトで紹介されているリンク等を頼りに少しづつ理解を深めていこうと思っている次第です。

HF-STARTという名のとおり、周波数帯は3~30MHzであり、個人的には長波、中波帯もカバーしてもらいたいなと思いますが、NICTの担当者にお伺いしたところ、次のターゲットの周波数帯はLバンドへの適用を最優先に考えているとのことでした。中波DXや、アマチュア無線の1.8MHz帯の交信はとかく謎めいた伝搬が多いので、是非シミュレーションができるようにしていただきたいなとアマチュアながら思っているところです。

試しに前回のソーラーサイクルのピークを向えた2014年の午前11:15における東京-アメリカ・オレゴン州ポートランドの間の21.25MHzの電波伝搬の様子を各月別にシミュレーションしてみました。電離層電子密度分布はIRIモデルを使ってみました。1回の計算に約42秒程かかりました。およそ3回の反射で電波が到達することがわかりますが、季節によっては、ポートランドがスキップされてしまうこともわかります。こうやって、電離層伝搬のシミュレーション結果が簡単に参照できるようになるなんて、すごい時代になったものだと思います。NICTの研究者の方々に拍手を送りたいです。

伝搬シミュレーション結果の出力は3Dマップになっているのですが、角度を変えてみることが出来ないため、パスの方向によっては見づらいこともあります。3Dマップをマウスでグリグリ動かせるようになるともっといいですね。また送信点、受信点の緯度、経度の入力もできれば地図上でクリックすることで入力できるようになると使い勝手はさらに良くなるように思いました。



先日、この本を購入しました。 太陽活動もミニマムを抜け、今後は少しづつ活発になることが予想されています。2025年頃がピークの様子です。大きなアンテナを建てることは難しいかもしれませんが、今はFT8等を使った交信もありますし、QRPでも交信のチャンスは広がりますよね。アマチュア無線はQRTして数十年経ってしまっていますが、そろそろHF帯へのカンバックも検討したいと考えています。


https://www.swpc.noaa.gov/products/solar-cycle-progression/ より

Monday, March 29, 2021

【速報】グアム中波局 KUAM (630kHz)が出力を10kWから2.5kWに変更して復活か

 アメリカ人DXer Glenn Hauser氏によると、昨年停波したグアム中波局 KUAM (630kHz)が出力を10kWから2.5kWに変更して復活するようです。

 同氏がイギリスの中波DXサークル、"Medium Wave Circle" に投稿した情報を元に整理しますと、

  • KUAMは、Good News Broadcasting Corpという会社に譲渡されており、同会社は、FCCに対してKUAMをノンコマーシャル局への変更を申請している
  • KUAMは、これまでグアム島Aganaから、10kWの送信出力で常時放送していたが、KUAMの継続的な運営を可能にするために、Good News Broadcasting社は 短波放送局KSDAの敷地内に仮設して使用することを決定。この敷地は、Aganaから17km程離れた場所
  • 送信アンテナについてはKSDA用のアンテナタワーに傘型スポークワイヤーを設置したもので5kW以下での運用が提案されている。(※筆者注 仮設によるためか?)
  • FCC AM Query を見ると、新しい送信点から送信出力2.5kW(日中及び夜)で送信する申請がされており、FCCは特別な一時的権限を持って許可したようである
  • 昨年停波するまでKUAMは、Pasific Telestationsによる、”Isla63”というブランドで放送されていたが、新しい免許申請者はGood News Broadcasting Incとなっている。この会社は、キリスト教系放送をしているが、KUAMがAdventist World Radioとどのような関係になるのかは明らかになっていない

とのことです。

 American DXer Glenn Hauser reports that the Guam medium wave station KUAM (630 kHz), which was shut down last year, will be revived with a new output power of 2.5 kW instead of 10 kW.

 The following is a summary based on the information he posted on "Medium Wave Circle", a medium wave DX circle in the UK.
  • KUAM has been transferred to a company called Good News Broadcasting Corp, which has applied to the FCC to convert KUAM to a non-commercial station.
  • KUAM has been broadcasting from Agana, Guam, at a constant transmit power of 10kW, but in order to allow for the continued operation of KUAM, Good News Broadcasting Corp. has decided to use a temporary location on the grounds of shortwave station KSDA. This site is about 17 km away from Agana.
  • As for the transmitting antenna, it is proposed to be an antenna tower for KSDA with an umbrella-type spoke wire, and to be operated under 5kW. (*Author's note: Is this because of the temporary installation?)
  • The FCC AM Query shows that an application has been filed to transmit at 2.5kW (daytime and nighttime) from the new transmission point, and the FCC seems to have granted it with special temporary authority.
  • KUAM was branded "Isla63" by Pasific Telestations until it was shut down last year, but the new license applicant is Good News Broadcasting Inc. The new license applicant is Good News Broadcasting Inc, a Christian broadcasting company, but it is not clear what relationship KUAM will have with Adventist World Radio.


KSDA敷地内に仮設されるKUAMの送信アンテナ
KSDA敷地内に仮設されるKUAMの送信アンテナ


仮設アンテナで2.5kWで送信した場合の電界マップ(黒)とこれまでの電界マップ(赤)







Sunday, December 6, 2020

2020年東北海道DXペディションでキャッチしたアラスカ中波局

 2020年11月21日(土)から23日(月)にかけて、ベテラン中波DXerのシエスタさん、しんぞうさんの3人で、東北海道にて中波DXペディションを行いました。コロナ禍の中での実施ということもあり、常時マスク着用(外すのは食事の時だけ)、手洗い、うがいの徹底はもちろんのこと、宿も一人一部屋確保、食事は短時間で済ませる、アルコールは一緒に飲まない等コロナ対策を徹底した上での実施となりました。

 ペディションでは、受信アンテナとしてシエスタさん謹製の40m長のTDDF(D-KAZ)アンテナを利用し、分配器でアンテナ出力を分配し各自のSDRで収録、解析するという形を取っています。

 現在SDR、Perseusで録り溜めた約750GBに及ぶ記録ファイルを解析中ですが、期間中は、北米西海岸方面の中波局が日夜共に強力に入感していました。北米内陸部も、テキサス、ルイジアナの常連局が顔を元気に見せていた程度です。スペイン語局も多数捉えられていますが、IDの確認に苦労しています。どうやら北米東海岸中波局を狙う我々にとってはあまり嬉しくない伝搬となってしまったようです。

 それでも、ノイズレベルの本当に少ない環境下で、様々な北米中波局を受信できるのは、非日常の体験であり、大変面白いものです。

 記録ファイルの解析途中ではありますが、多くのアラスカ局が受信出来ていましたので、ここで紹介します。アラスカ局には関東でも受信が可能なKICYやKNOM等の超常連局がありますが、ここ東北海道では、関東では考えられないくらいの受信レベルで、かつ良好な音質での受信が可能です。特にKNOMにおいては、「アラスカの現地で受信したんじゃないのか?」と思われる程の良好な音質で受信できています。

 アラスカ中波局は現在、36局在しているようですが、そのうち24局についてはIDを確認、1局についてはインターネットストリーミングでのパラチェックで確認できました。

  この図は、アラスカの中波局の場所を示したものです(クリックすると大きく表示されます)。黄色は今回確認できた局、オレンジは推定局、水色は確認できなかった局となります。

Fig.1 アラスカ中波局の位置(画像クリックで拡大)

受信音を紹介します。青字コールサインをクリックすると別窓で音声ファイルが再生できます。
 送信電力は夜間の値です。どの局もIDはしっかり確認できますが、820kHzのKCBF(女性の声)は、同周波数のテキサス州のWBAP(男性の声)の混信を受けています。1170kHzのKJNPは、同周波数の韓国局HLSRの混信をかなり受けています。HLSRは送信電力500kWなのでこの混信は厳しいですね。

 KFQDのジングルはお馴染みですが、AMの周波数(750kHz)のジングルとは別のFMの周波数(103.7MHz)のジングルがあることも今回始めて知りました。(FMの周波数のジングルはこちら)

 720kHzのKOTZは、同局の放送スケジュールによると、週末の夜間は音楽をずっと流しているだけの様子で、IDの確認が出来ずに、インターネットストリーミングでのパラチェックで同局であることの確認にとどまっています。(ペディションに同行されたシエスタさんが、11/20(金)の18時にKOTZのIDを確認されています。音声ファイルを、ebbs-zettoにアップしていただきました。シエスタさんありがとうございます。)

 KBRWは世界で最も北に位置する北極圏の放送局です。今回2018年に引き続き2回目の受信が出来ました。
   
Date/TimeFreq[kHz]Station (Click)TX PowerCity
2020.11.21 15:00JST550KTGN
5kWAnchorage
2020.11.21 17:00JST590KHAR
5kWAnchorage
2020.11.22 03:00JST620KGTL
5kWAnchorage
2020.11.22 03:00JST630KIAM
3.1kWNenana
2020.11.22 03:00JST640KYUK
10kWBethel
2020.11.21 15:00JST650KENI
50kWAnchorage
2020.11.22 03:00JST670KDLG
10kWDillingham
2020.11.22 04:00JST680KBRW
10kWBarrow
2020.11.22 03:00JST700KBYR
10kWAnchorage
2020.11.22 01:00JST750KFQD
10kWAnchorage
2020.11.22 03:00JST770KCHU
9.7kWValdez
2020.11.22 04:00JST780KNOM
50kWNome
2020.11.21 19:00JST790KCAM
5kWGlennallen
2020.11.21 19:00JST820KCBF
10kWFairbanks
2020.11.22 03:00JST830KSDP
1kWSand Point
2020.11.21 17:00JST850KICY
50kWNome
2020.11.22 00:00JST890KBBI
10kWHomer
2020.11.22 03:00JST920KSRM
5kWSoldotna
2020.11.22 03:00JST930KNSA
4.2kWUnalakleet
2020.11.22 03:00JST970KFBX
10kWFairbanks
2020.11.21 15:00JST1020KVNT
10kWEagle River
2020.11.22 03:00JST1110KAGV
10kWBig Lake
2020.11.22 03:00JST1140KSLD
10kWSoldotna
2020.11.22 04:00JST1170KJNP
21kWNorth Pole

 さて、KFBXは、KFQDと同様のメロディのジングルを出していました。KFBXはFairbanksにある放送局ですが、だからK-FBXなんですね。(FBX=Fairbanks)アメリカの放送局のコールサインはその放送局がある街の名前が反映されているものが結構ありますね。例えば、今回の他のアラスカ局の中にも
   
KDLG      DLGはDillinghamの略
KBRW     BRWはBarrowの略
KNOM     NOMはNomeの略
KSDP      SDPはSand Pointの略
KSLD  SLDはSoldotnaの略
KJNP   NPはNorth Poleの略

といったようにコールサインも地元のリスナーに親しみが出るようなものに工夫されているようです。

 今回のアラスカ局は、15時台から19時台、そして深夜3時から4時台で良好に受信出来ています。11月22日(日)の午前3時半のアラスカと日本の夜間エリアの様子を調べてみると、アラスカの多くのエリアがグレイラインの中に含まれていました。このグレイライン(日出境界線付近)では、異常伝搬が起こり、信号レベルが上昇することがあることは昔から知られているところです。北米側で深夜から夜明けを迎えるグレイラインがかかることによる中波伝搬をTPDXでは、2次伝搬と呼ぶこともあります。(逆に日本が昼から日没を迎えるグレイラインがかかることによる伝搬を1次伝搬と呼ぶことがあります)

Fig.2 2020年11月22日午前3時30分の夜間エリアとグレイラインの様子
(画像クリックで拡大)
(アラスカがグレイラインの中に入っていることがわかる)

まだ解析途中ですが、面白い局等見つかりましたら、適宜このブログで紹介していきたいと思っています。