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Saturday, September 12, 2020

ラジオ沖縄の送信電波に関して真面目に伝搬ロス等を計算した話

 毎週日曜深夜0時から30分、ラジオ沖縄(864kHz 10kW)で「ROK技術倶楽部」というちょっとマニアックな番組が7月6日から開始されています。これはラジオ沖縄の技術管理部の若い社員3名の方々が、番組の進行を任せられており、「私のベリカード自慢」や、「受信報告書の紹介」等、ここ数十年、日本のラジオ放送番組では取り上げることのなかった内容を取り上げたり、今週のラッキー音声と称して、キャノンコネクタがつながる時の音等を真面目に流すこともあれば、放送現場で番組登録時にお約束でファイルの先頭に録音している1kHzを真似て、本当に1kHzを番組冒頭で流すなど、かなりこだわったマニアックな放送となっています。さらに、Radiko全盛の今、インターネット上で、オフラインで番組を楽しめる、タイムフリー聴取が可能であるはずですが、あえてRadikoでのタイムフリー放送をせずに、あえてオンタイムで聞いてほしいという番組ポリシーを貫いており、こういった拘りが日本国内の中波DXerの耳に入った途端、サービスエリアにはいない沖縄県外の日本国内の多くの中波DXerがオンタイム受信にチャレンジしている状況になっています。



 オンタイムで受信しながら、Twitter上で#はんだ864のハッシュタグ(ROK技術倶楽部のハッシュタグ)をつけて、受信状況を報告しあうという状況も生まれています。周波数は864kHzであり、同周波数は、北海道放送(HBC)や、韓国局がいるために、サービスエリア外受信においては、相当な混信が避けられないため、受信は決して容易ではないことから、受信アンテナにフラグアンテナや、ループアンテIナと垂直系アンテナを組み合わせてカージオイド指向特性をもたせて混信を回避する努力をしたり、混変調によるバンド内のザワツキを低減する目的でLPFやマルチノッチフィルター回路を自作して隣接局のレベルを落とす等、日曜深夜の30分番組を聞くために、受信者側も相当な熱量を持ってトライしている様相が見られます。

 さて、Twitterでのやり取りの中で、ラジオ沖縄を関東で受信する場合、どのくらい伝搬ロスがあるんだろうか?という質問がありました。サービスエリア外でのラジオ沖縄の受信は、夜間の電離層伝搬(Skywave)による受信となります。この電離層伝搬によってフェージングを伴いながら届く電波は、様々な伝搬損失を受けることがわかっています。さらに国連の専門機関である国際電気通信連合(ITU-R)から、”約150kHzから1700kHzの周波数における電離層反射波の電界強度推定法(ITU-R P.1147-4 電界強度の年中央値が推定できる) が勧告として出されており、この推定法を使うことで伝搬ロスを計算することが可能です。ここでは、このITU-R.P.1147-4を使って、ラジオ沖縄を電離層伝搬で関東地域で受信する場合に受ける伝搬ロスについて真面目に計算してみました。


ラジオ沖縄那覇送信所の送信空中線
基部設置型のダウンリード(かご型)型空中線と思われる
(Wikipediaから)


 ラジオ沖縄は、東京圏からは約1500~1600kmも離れており、受信状況は、受信ロケーションや電離層の状態に大きく影響を受けます。電離層伝搬上は、E層によるワンホップ(1回反射)で信号が到来していると考えられます。ITU-R P.1147-4によれば、受信点での電界強度は以下の式で計算されます。


伝搬損失には次の項目があります。
  • ①距離損    伝搬距離により決まる損失
  • ②偏波結合損  偏波面が電離層ー地上間での反射で変換されることによる損失
  • ③電離層吸収損 電離層吸収による損失他 
  • ④時間損    日没から日の出前後の電界低下量
  • ⑤太陽活動損  太陽活動によって決まる損失

では、計算結果を示します。計算過程は煩雑な計算が大量に必要となるため、紹介を割愛します。受信点の選定はTwitterでやり取りをさせていただいている仲間の皆さんの地域を参考に最寄り駅等を適当に選んで当てはめてみました(^_^)。

①距離損




②偏波結合損




③電離層吸収損




④時間損 深夜0時台の受信であるためゼロになります。

⑤太陽活動損 送受信点の地磁気的緯度が45°より小さいためゼロになります。

⑥全損失合計(①+②+③)




⑥の全損失合計を見ると、受信点によって差はあるものの、約73-74dBであり、その差は1dB以内に留まっていました。顕著な違いは無いですね。

 しかし、Twitterでのやり取りを見ていると、受信点によっては、信号強度に顕著な差があることが報告されています。もちろん、使っている受信アンテナや、設置環境が異なることはその要因の一部となるでしょう。しかしそれ以外にも、かなり効いてくる要因があります。それは「海利得(Sea Gain)」です。海利得は送信側、受信側にそれぞれ利得として与えられ、伝搬路上、送信点、受信点が海に近ければ近いほど海利得は大きく得られます。

 各受信点における海利得の結果を示す前に、伝搬路方向におけるROKラジオ沖縄の送信点と海岸前での距離、そして受信点と海岸までの距離を見てみましょう。


ラジオ沖縄は、この写真からわかるとおり、関東方面への伝搬方向では、海岸からわずか1.8 km程しか離れていません。海利得を得ることが出来ます。一方、受信点側はどうでしょうか?


さいたま市浦和区、東村山市は、約200kmも海岸から離れています。これでは受信側の海利得は期待できません。同様に、東京都大田区、川崎市高津区、神奈川県海老名市等も伝搬路方向に対しては海岸から相当に離れており、受信側への海利得は期待できません。

 では、海利得の計算結果を示します。



横浜市戸塚区と神奈川県横須賀市は他の地点と比べて顕著に海利得が大きい結果となりました。ちょっとしたプリアンプ追加と同じですよね。Twitterでの受信報告を振り返るとこの結果は納得がいくと私は思います。やはり、中波DXを十分に満喫するには、伝搬路方向上、海岸に近いほうがいいのです。(もちろん、周囲雑音等の影響、ローカル中波局の影響も十分に考える必要はありますが。)

いかがだってでしょうか、以上まとめますと、

ラジオ沖縄の伝搬損失は、今回調査した地点ではおよそ73-74dBであり、受信点による差はほとんど無い。

一方、海利得については海岸に近い横浜市戸塚区、神奈川県横須賀市がもっともその恩恵を受けており、これまでTwitterで寄せられた受信報告を聞く限りは納得行く結果である。

ということになろうかと思います。皆様からのディスカッション歓迎します。

Monday, August 24, 2020

ApexRadioの 303WAというアンテナについて(その1)

 ApexRadioから販売されている、303WA-2という全長1.8mのホイップアンテナがあります。これは、旧版の303WAの後継機種ですが、寸法はそのままで、垂直エレメントを分解した時の長さを輸送に適した長さに再調整されたものと聞いています。303WAの名前の由来は、30kHzから30MHzをカバーするWhip Antenna ということで、303WAとなったとApexRadioの大嶋社長から戸塚DXer'sサークルのオンラインミーティングにて伺っています。

303WA-2(ApexRadio HPより)

 このアンテナは、無電源つまり、完全なパッシブアンテナであり、混変調などに強く、静かなアンテナであるという良い評判がいたるところで聞かれます。しかしその一方で、ゲインが不足気味だという意見も結構聞かれます。私は303WAを10年ほど使っていますが、ベランダなどにポン起き(何も考えずに設置)して、通信機型受信機に接続して気軽にワッチする目的には使いやすいアンテナだなというのが感想です。設置場所をほとんどとらないのもいいです。ただ、設置条件によっては、ノイズを拾いやすいという経験もしています。その時は、ベランダの手すりに銅箔テープを貼り、銅箔テープに太めのACケーブル(単線)をはんだ付けした後、その先をこのアンテナの外導体部分に接続することで、実際にノイズをかなり抑え込むことに成功した経験もあります。

 さてこのアンテナ、ApexRadioのホームページ上では、”軽量でコンパクトなサイズながら、独自のマッチング回路(実用新案出願中)を採用したことで、長波~短波帯の広帯域において優れた受信性能を発揮します”と書かれており、アンテナインピーダンスも50Ωははないようだという複数の報告がネット上にあります。私が調べた限りでは、下記ホームページ(ブログ)上で報告がされていました。リンクを下記に記します。

2006.3 ApexRadio 303WAモニターレポート(NDXC 堀場氏のレポート

2009.12.9 どら日記「303WA-2」

2017.7.14 R.yawattaのラジオと工作「303WA-2の疑問」

2018.2.18 kerokeronyororoのblog「M・C・L式中波帯受信用簡単チューナー(その3)」

2018.6.3 『ど』のページ「303WA-2の動作原理(推測)」

 いずれの報告でも、このアンテナに同軸ケーブルを繋げて、同軸ケーブル端からのインピーダンスをアンテナアナライザーで測定されているようです。(『ど』のページでは、インピーダンスアナライザに直結した測定例もあります)インピーダンスが波打つように変化する様子が報告されていますが、これはアンテナインピーダンスの正しい測定の仕方ではないと私は思います。特定のインピーダンスが同時ケーブルに接続されていた場合、その同軸ケーブルの長さが信号の波長λ/2の整数倍になった場合には、同軸ケーブルに接続された先のアンテナのインピーダンスの正しい値が測定可能ですが、それ以外の長さでは、同軸ケーブルの影響を受け、インピーダンスはかなり変わったものとなり、インピーダンスは繰り返し変化してしまいます。その理屈は、ハム三昧というHPで丁寧に説明されています。アンテナのインピーダンス測定は、アンテナアナライザーとアンテナ間はできるだけ短い距離で接続して測定するのが正しいはずです。

 私は手元にアンテナアナライザー(ブリッジ型)MFJ-259Cがあるので、このアナライザーに303WAを直結し、同軸ケーブルを挟まずにアンテナインピーダンスを測定してみました。幸い、303WAはアンテナ端子がM型コネクタのプラグになっており、MFJ-259CのM型コネクタのジャックに直接接続することができました。

MFJ-259Cに303WAを直結して測定

 それでは、測定結果を以下に記します。私は、中波DXがメインフィールドなので、測定周波数は3MHzまでとしました。700kHz以下の領域では、インピーダンスZが650Ωを越えてしまい、MFJ-259Cの測定レンジを超えるので、測定していません。また、さらに周波数を上げていっても、30MHz程度までの短波帯の範囲では、たんだんと続けてRパート、Xパート(リアクタンス)は小さくなっていくようです。Xパートは、周波数が大きくなるにつれ小さくなっていますので、容量性と考えられます。これは波長よりかなり短いホイップアンテナは一般に容量性を示すことから、そう言えると思います。したがってjパートで考えるなら、この値は、マイナスの値になりますが、グラフ上は絶対値|Z|で表示しています。(MFJ-259Cはjパートのプラスマイナスは表示しない)ちなみに、MFJ259Cに直結せずに、M型のP-Pプラグでアンテナとアンテナアナライザーを中継接続した場合は、たかだか数センチ距離が伸びただけですが、Rパートの値が周波数1000kHz以下で40Ω程度小さくなりました。

 この測定結果より、特に中波帯に注目しますと、Rパートは特に低い周波数帯で数百Ωもあり、Xパートもはさらに大きな値になっていますので、入力インピーダンス50Ωの通信型受信機にこのアンテナを接続すると、2MHz程度まではハイインピーダンス出し、ローインピーダンス受けの状態になっていることがわかります。つまり、せっかくホイップアンテナに誘起した信号電圧の大半は、アンテナ側のインピーダンスにかかってしまい(分圧されてしまい)、負荷となる通信機型受信機の50Ωにはあまり信号電圧がかからないわけです。

 一方で、周波数が高いほう、短波帯になると、アンテナインピーダンスはどんどん下がっていき、ローインピーダンス出し、ハイインピーダンス受けの格好になっていきます。

グラフ1 303WAのアンテナインピーダンス測定結果

 さて1.8m程度の金属棒はインピーダンス・マッチングと取らなければ、中波帯域においては、リアクタンス成分が大変大きくなることが予想されます。計算していないので正確な値はわかりませんが、数kΩレベル?にもなるかもしれません。あまりにも素のインピーダンスは高すぎる。この303WAは、独自のマッチング回路を採用したことで、インピーダンスを下げた結果このようになったと思われます。さてこのマッチング回路にはどんな狙いがあるのか?
 
 グラフ2は、このアンテナに入力インピーダンス50Ωの通信型受信機を接続した場合に、アンテナに誘起した電圧信号がどのくらい減衰して受信機に加わるのかを計算した結果になります。

グラフ2 入力インピーダンズ50Ωの受信機に接続した場合の信号減衰量

 つまり、中波帯域では周波数によって変わるものの、およそ13~25dB相当のアッテネーターが入っていることと同じになります。こういったことから、私はこのアンテナの設計者は、中波の強電界における過入力によって受信機で引き起こされる混変調等の弊害を避けたいがために、わざとこのような設計をされたのではないか?と推測しています。みなさんはどのように思われますか?。ただし、インピーダンス・マッチングは全く成立していないので、SWRは全く悪いままですが、送信に使うわけでもないので気にする必要はあまりないと思われます。

 このアンテナに長い同軸ケーブルを接続した場合に、アンテナとしてどう振る舞うかについては、別途検討したいと思います。接続する同軸の長さによって同軸込のインピーダンスは繰り返し変化するようです。

 次回は303WAに採用されている独自のマッチング回路について考察します。(続く)

Saturday, August 22, 2020

ダラス・ランクフォードさんのこと - Mr. Dallas Lankford -

 昨日、中波DXerの先輩と、中波DX用アンテナについてオンラインで議論していた中、中波DXの受信アンテナの研究・開発・実験に精力的に取り組まれていたダラス・ランクフォードさんの開発レポートを参照することがありました。その後、別の文献をリサーチすべく、ネットを検索していたところ、今年の6月末にダラスさんが、お亡くなりになられていたことをこの新聞記事で知りました。享年78歳。ダラスさんは、大学で数学教授をされていて、技術コンサルタントもされており、61歳で仕事から退職されてから、中波DXのアンテナの研究にさらにフルタイムで取り組まれていらっしゃったようです。  

 Yesterday, in an online discussion with a senior MW DXer about antennas for MW DXing, I had to refer to a development report by Dallas Lankford, who was actively involved in the research, development, and experimentation of MW DX receiving antennas. After that, when I was searching another reports on the net,I learned from this newspaper article that he had passed away at the end of June this year. He was 78 years old. Mr. Dallas was a professor of mathematics at the university and also a technical consultant, and after retiring from his job at the age of 61 years old, he seemed to be working on the research of medium wave DX antennas more full time. 

ダラス・ランクフォードさん
在りし日のダラス・ランクフォードさん

 私は、ダラスさんとは面識はありませんでしたが、ダラスさんの情熱のこもった、かつ緻密な開発レポートの多さに圧倒され、その開発レポートの多くに目を通させていただきました。まだ全ての理解には至っていませんが、大変大きな資料的価値を感じています。これからも中波DX用アンテナを検討する際のリファレンスになることは間違いないでしょう。ダラスさんの数々の開発レポートは、次のリンクから参照することができます。

  I was not acquainted with him, but I was overwhelmed by the amount of his passionate and meticulous development reports and I have read through many of them. I'm not sure I understand all of them yet, but I've found them to be very valuable. I have no doubt that these reports will be worth references when considering an antenna for MW DX in the future. You can refer to his numerous development reports at the following link,

Anténářská kolekce Dallase Lankforda

「ダラスさんの数学の研究と無線の追求の複雑さは、集中力、時間、独立性を必要としましたが、彼をよく知る人々は、彼の知的な輝き、途方もないエネルギー、ユーモアのセンス、そして彼のカリスマ性と輝きに満ちた性格を賞賛していた」と同記事にはあります。

The article says,
"While the complexity of his mathematics research and radio pursuits required intense focus, time, and independence, those who knew him well admired his intellectual brilliance, tremendous energy, sense of humor, and his charismatic, sparkling personality." 

 ダラスさんは、自分の研究メモ・開発メモをドキュメントできちんと残されていらっしゃいます。見習わなければと思いました。僕の場合はハードディスクの中に書きかけ、計算途中のワードファイルや、エクセルファイル等がゴミのように溜まっているだけ。きちんと書いて残すというのは、やってみるとわかりますが、相当にエネルギーを必要とする作業です。仕事でもプライベートでも、後に自分のやったことをきちんと書いて後世に残すということは、とても大切なことではないでしょうか? 

 一線を退かれても、趣味に対して精力的に取り組まれたダラスさんの姿勢は、僕も真似できるようになりたいと思った次第です。何かに熱中されている方の表情には、年齢を重ねたとしても「若さ」「充実感」に溢れていると思うのは私だけでしょうか。

 He has neatly documented his research and development memos. I thought I should learn from him. In my case, I just make word files or excel files etc in the middle of calculations and they are piling up in my hard drive like garbage. Writing it down properly and leaving it behind is a process that takes a lot of energy, as you'll see when you try it. Isn't it very important to write down what you've done and leave it behind for posterity, both in your work and personal life? 

 I want to be able to imitate his energetic approach to his hobbies, even though he have retired from the field. People who are passionate about something seem to have an overflowing sense of youth and fulfillment even as they age.  Am I the only one who thinks like this? 


Tuesday, August 4, 2020

NHK will reduce channel of NHK AM radio in the future

     Dear MW DXers, Here is the information released by a Japanese news paper(Asahi shinbun) about reducing channel of satellite and NHK AM radio broadcasting in Japan.

---------------------English translation------------------
    On August 4, NHK announced its management plan for the next fiscal year (2021-2023), which includes a plan to reduce the number of channels for satellite and AM radio broadcasting.

    Of the four satellite broadcasting channels, the plan combines the high-definition (2K) quality "BS1" and "BS Premium" into one channel and the plan also states that "consideration will be given to reducing the number of satellite channels including the high-definition (4k) quality " BS4K" to one in the future.

    For NHK AM radio, NHK1 and NHK2 will be combined to one NHK AM radio. A specific proposal for the timing of implementation will be shown withing the plan period.