オンタイムで受信しながら、Twitter上で#はんだ864のハッシュタグ(ROK技術倶楽部のハッシュタグ)をつけて、受信状況を報告しあうという状況も生まれています。周波数は864kHzであり、同周波数は、北海道放送(HBC)や、韓国局がいるために、サービスエリア外受信においては、相当な混信が避けられないため、受信は決して容易ではないことから、受信アンテナにフラグアンテナや、ループアンテIナと垂直系アンテナを組み合わせてカージオイド指向特性をもたせて混信を回避する努力をしたり、混変調によるバンド内のザワツキを低減する目的でLPFやマルチノッチフィルター回路を自作して隣接局のレベルを落とす等、日曜深夜の30分番組を聞くために、受信者側も相当な熱量を持ってトライしている様相が見られます。
さて、Twitterでのやり取りの中で、ラジオ沖縄を関東で受信する場合、どのくらい伝搬ロスがあるんだろうか?という質問がありました。サービスエリア外でのラジオ沖縄の受信は、夜間の電離層伝搬(Skywave)による受信となります。この電離層伝搬によってフェージングを伴いながら届く電波は、様々な伝搬損失を受けることがわかっています。さらに国連の専門機関である国際電気通信連合(ITU-R)から、”約150kHzから1700kHzの周波数における電離層反射波の電界強度推定法(ITU-R P.1147-4 電界強度の年中央値が推定できる) が勧告として出されており、この推定法を使うことで伝搬ロスを計算することが可能です。ここでは、このITU-R.P.1147-4を使って、ラジオ沖縄を電離層伝搬で関東地域で受信する場合に受ける伝搬ロスについて真面目に計算してみました。
ラジオ沖縄那覇送信所の送信空中線 基部設置型のダウンリード(かご型)型空中線と思われる (Wikipediaから) |
ラジオ沖縄は、東京圏からは約1500~1600kmも離れており、受信状況は、受信ロケーションや電離層の状態に大きく影響を受けます。電離層伝搬上は、E層によるワンホップ(1回反射)で信号が到来していると考えられます。ITU-R P.1147-4によれば、受信点での電界強度は以下の式で計算されます。
- ①距離損 伝搬距離により決まる損失
- ②偏波結合損 偏波面が電離層ー地上間での反射で変換されることによる損失
- ③電離層吸収損 電離層吸収による損失他
- ④時間損 日没から日の出前後の電界低下量
- ⑤太陽活動損 太陽活動によって決まる損失
では、計算結果を示します。計算過程は煩雑な計算が大量に必要となるため、紹介を割愛します。受信点の選定はTwitterでやり取りをさせていただいている仲間の皆さんの地域を参考に最寄り駅等を適当に選んで当てはめてみました(^_^)。
①距離損
④時間損 深夜0時台の受信であるためゼロになります。
⑤太陽活動損 送受信点の地磁気的緯度が45°より小さいためゼロになります。
⑥全損失合計(①+②+③)
⑥の全損失合計を見ると、受信点によって差はあるものの、約73-74dBであり、その差は1dB以内に留まっていました。顕著な違いは無いですね。
しかし、Twitterでのやり取りを見ていると、受信点によっては、信号強度に顕著な差があることが報告されています。もちろん、使っている受信アンテナや、設置環境が異なることはその要因の一部となるでしょう。しかしそれ以外にも、かなり効いてくる要因があります。それは「海利得(Sea Gain)」です。海利得は送信側、受信側にそれぞれ利得として与えられ、伝搬路上、送信点、受信点が海に近ければ近いほど海利得は大きく得られます。
各受信点における海利得の結果を示す前に、伝搬路方向におけるROKラジオ沖縄の送信点と海岸前での距離、そして受信点と海岸までの距離を見てみましょう。
ラジオ沖縄は、この写真からわかるとおり、関東方面への伝搬方向では、海岸からわずか1.8 km程しか離れていません。海利得を得ることが出来ます。一方、受信点側はどうでしょうか?
さいたま市浦和区、東村山市は、約200kmも海岸から離れています。これでは受信側の海利得は期待できません。同様に、東京都大田区、川崎市高津区、神奈川県海老名市等も伝搬路方向に対しては海岸から相当に離れており、受信側への海利得は期待できません。
では、海利得の計算結果を示します。
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