中波DXと北極のオーロラ その3
MW DXing and Aurora Borealis Part 3
今回は、アラスカ大学のハンサッカー名誉教授とランカスター大学のハーグリーブス博士によって書かれた、"The High-Latitude Ionosphere and its Effects on Radio Propagation”(高緯度電離層と電波伝搬に対するその効果)"という学術書に掲載されている、オーロラ・オーバルと中波電波伝搬の関係を紹介したいと思います。先に紹介したとおり、ハンサッカー教授らは、アラスカのフェアバンクスに受信機を設置し、アメリカ、カナダ国内の中波局を多数受信し、オーロラ・オーバル位置と、各中波局の受信レベルを測定しています。こういった測定を丹念にきちんとしてくださった、ハンサッカー教授とハグリーブス博士に敬意を表したいと思います。
*以下の図2以降は全て同学術書から引用したものに、適宜加筆したものです。
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今回は、アラスカ大学のハンサッカー名誉教授とランカスター大学のハーグリーブス博士によって書かれた、"The High-Latitude Ionosphere and its Effects on Radio Propagation”(高緯度電離層と電波伝搬に対するその効果)"という学術書に掲載されている、オーロラ・オーバルと中波電波伝搬の関係を紹介したいと思います。先に紹介したとおり、ハンサッカー教授らは、アラスカのフェアバンクスに受信機を設置し、アメリカ、カナダ国内の中波局を多数受信し、オーロラ・オーバル位置と、各中波局の受信レベルを測定しています。こういった測定を丹念にきちんとしてくださった、ハンサッカー教授とハグリーブス博士に敬意を表したいと思います。
*以下の図2以降は全て同学術書から引用したものに、適宜加筆したものです。
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Hunsucker, R., & Hargreaves, J. (2002). High-latitude radio propagation: Part 1 – fundamentals and early results. In The High-Latitude Ionosphere and its Effects on Radio Propagation (Cambridge Atmospheric and Space Science Series, pp. 417-536). Cambridge: Cambridge University Press. doi:10.1017/CBO9780511535758.010
結論から言ってしまうと、各局からの電波伝搬路に、オーロラ・オーバルがすっぽりかかってしまう、あるいは斜め方向に触れるようなことがあると、フェアバンクスでの受信レベルが相当劣化するというものです。
まずは、オーロラ・オーバルが全く電波伝搬路にかかっていない状況について紹介します。図2は、"The High-Latitude Ionosphere and its Effects on Radio Propagation”の
Chapter 8
High-latitude radio propagation: part 1 – fundamentals
and experimental results の433ページに記載されているFigure 8.14とFigure 8.15を引用し、私が、各中波局と、フェアバンクスまでの伝搬路をGoogle Earthを用いて、出来る限り正確に同図に書き込んだものです。(青色:局名、赤色:伝搬路)図2の左側は、1985年の9月4日の10:00UTC( フェアバンクスは深夜0時)のオーロラ・オーバルの位置と各局からの電波伝搬路の様子です。オーロラ・オーバルは伝搬路には全くかかっていません。
図2の左側は、同日の各局の受信レベルになります。横軸の時刻はUTCであり、受信レベルはおよそ5:00UTC頃から上昇し、15:00UTC頃に下がっていますが、これはフェアバンクスのローカル時刻にすると19:00から05:00となり、夜間伝搬を表しています。この二つの図を比較すると、オーロラ・オーバルが電波伝搬路にかかっていない場合は、良好な受信レベルが得られていることがわかります。
(※図2の右側の受信レベルのグラフについては、ハンサッカー教授らは、本文中では、Figure 8.14 shows typical variations in signal for quiet magnetic conditions.としか記述していませんが、Figure.8.16の図が、DAY 251 1985となっており、同図が1985年の9月8日となっていることから、DAY 247 1985と記されているFigure.8.14は1985年の9月4日のものと考えられます。またFigure 8.15は、本文中では1985年の9月4日のものとあるのに対し、同図のキャプションには2月4日と書かれています。これはキャプションの方が誤植と考えられます。)
続いて、オーロラ・オーバルが各中波局の電波伝搬路にかかったケースについて紹介します。図3はでは、オーロラ・オーバルに斜め方向から入り込んでいる(オーロラ・オーバルのかかっている距離が長い)KGA、KTWO、CFRNの受信レベルが大きく劣化しています。またその伝搬路がすっかりオーロラオーバルに覆われてしまっているKOTZも受信レベルが大きく劣化しています。それに対して、ほぼ垂直方向から入り込んでいる(オーロラ・オーバルのかかっている距離が短い)KFAX、KFQD、KSKOは殆ど劣化していません。
さて、続いてカナダのCFRNのフェアバンクスでの受信レベルについて、(a)伝搬路がオーロラ・オーバルに覆われていない場合、(b)伝搬路がすっぽりオーロラ・オーバルに覆われてしまった場合、(c)伝搬路がオーロラ・オーバルに接触した場合の3つのケースについて受信レベルの状態がまとめられていましたので、ここに引用してみたいと思います。
図4は電波伝搬路がオーロラオーバルにかかっていない場合です。同図の下側に、受信レベルのグラフが小さく描かれていますが、受信レベルがほぼ安定していることがわかります。
図5は、電波伝搬路がオーロラ・オーバルにすっぽり覆われた場合です。同図の下に描かれている受信レベルを見てみると、全く伝搬していないことがわかります。
図6は、電波伝搬路がオーロラ・オーバルかかり始めた時のものです。同図の下に描かれている受信レベルを見てみると、やはり受信レベルが変動し、大幅に劣化していることがわかります。
このように、オーロラ・オーバルが中波伝搬路に接触、あるいは伝搬路を覆ってしまうと、伝搬に大きな影響を与えることがわかりました。これらの知見は、中波DXの北極伝搬を検討する上で大きな知見となることは間違いないと思います。
今回はここまでとします、次回は、昨年11月に東北海道で北米東海岸局WBZ(ボストン)の受信に成功した時の伝搬状況、そして伝搬路上に存在しているアラスカ北端、バローのKBRWの伝搬状況とオーロラ・オーバルの関係を当時の受信音と共に振り返ってみたいと思います。(その4に続く)