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Tuesday, September 10, 2019

中波DXと北極のオーロラ その1

中波DXと北極のオーロラ その1  
MW DXing and Aurora Borealis Part 1

 まだ残暑が厳しいですが、北欧の中波DXerの方々のFacebookでの便りを見ていると、中波DXのコンディションが上がってきた様子です。季節は秋に向かいつつあるのですね。さて、私は、ここ数年TDXCメンバー他の仲間と、様々な場所にDXペディションに出かけては、北米中波局の受信に取り組んでいます。特に、太陽活動がボトム期にある今シーズンは、昨年に引き続き、北米東海岸中波局のキャッチに向けて知恵を絞っていきたいと考えているところです。

 北米東海岸中波局の受信は、かなり困難であることがわかっており、かつての月刊短波誌上でも、受信レポートは殆ど掲載されていなかったと思います。昨年、東北海道DXペディションで受信に成功したマサチューセッツ州ボストンのWBZ、メリーランド州のWPTX等は、長時間安定に入感していたわけでなく、フェージングで信号レベルが上がってきたところのごく短時間の受信でした。運が良かったとしか言いようがないです。

 さて、どういう条件の時に、北米東海岸の中波局の電波は日本まで伝搬してくるのでしょうか? 図1にWBZ、WPTXの送信地点と特にTPDXのための中波DXペディションで良く利用される日本の三陸海岸を受信点として大圏コースを描いてみると、そのどちらも北極に近いところを伝搬してきていることがわかります。WBZの伝搬路上には、アラスカの北端の街バロー(Barrow)の中波局KBRWがあることにも注目です。伝搬距離はおよそ10500-10600kmです。

Fig.1 WBZ, WPTXから三陸に向かう伝搬路
 さて、この北極に近いルートの中波の電波伝搬を困難にしている原因は、何かというと、オーロラであることがわかっています。オーロラ吸収(Aurora Zone Abosorption )や極冠吸収(Polar Cap Absorption)が発生し、電波が弱くなってしまうことがわかっています。ただ、どんなふうに弱くなるのか、中波帯の北極伝搬を研究した例はないのか等知りたいと思っていた私は、ずいぶんとこれまでインターネット上でGoogle 検索を駆使しながら、文献調査をしてきました。

そしてついに有用な知見が得られる文献を見つけることができました。サンキューインターネット時代! アラスカ大学のハンサッカー名誉教授とランカスター大学のハーグリーブス博士によって書かれた、"The High-Latitude Ionosphere and its Effects on Radio Propagation(高緯度電離層と電波伝搬に対するその効果)"という学術書です 。この本には、高緯度地域の電離層が電波伝搬にどのような影響を及ぼすかについて、その研究成果がまとめられています。なんと中波の北極伝搬についても言及されています。

Fig.2 The High -Latitude Ionosphere and its Effects on Radio Propagation の表紙
(Cambridge Atmospheric and Space Science Series)

 ここで述べられている中波の北極伝搬についての詳細は、後日紹介していきますが、なんと、ハンサッカー教授達は、アラスカフェアバンクスに受信機を設置して、私達もDXペディションで良く受信している常連局であるアラスカのKFQD,750kHzからワイオミングのKTWO,1030kHz, サンフランシスコのKFAX,1100kHz等を受信し、その受信レベルとオーロラの発生状況を事細かく検証しているのです。この内容については、後日紹介させていただきます。

Fig.3 ハンサッカー教授らがフェアバンクスでこれらの中波局を受信し、
その受信レベルとオーロラの発生状況を比較した
長くなりました。今回はこの辺で終わりにします。次回はオーロラについて中波DXをやる上で知っておいた方が良い基礎的なことをまとめます。(その2に続く)

 

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