中波DX用のシェアードエイペックスループアンテナの予備検討(2)
中波DX用にシェアードエイペックスループアンテナの検討を前回から開始しているわけですが、このアンテナは、微小デルタループアンテナを2基位相合成するのが基本となっています。微小デルタループアンテナのアンテナインピーダンス特性を4NEC2でシミュレーションしてみると、前回示したとおり次のような結果を得ます(アンテナ寸法は前回紹介したものと同じです。)。インピーダンス成分のうち、抵抗成分は数Ω程度、そしてリアクタンス成分は周波数に比例して直線的に増加していることから、等価的にインダクタンスとして見ることができます。シミュレーション結果からコイルの容量を計算してみると、28.7[μH]となりました。 抵抗成分を”えいやっ!”で無視することとすれば、等価回路は右図のような回路になります。
通常、こういったコイルからなるアンテナを受信機に接続する場合の「定石」は、皆さんご存知のとおり、直列に可変キャパシタンスを挿入して、直列共振回路を組み、リアクタンス成分をキャンセルして全アンテナ起電力をごっそり得ることになるわけですが、共振回路のQが高い程、その「ごっそり得る」ことが出来る周波数は共振周波数近傍の極限られた範囲に限定されます。すなわちSDRで中波帯域丸ごと記録する場合には不向きです。
そこで、ループアンテナの給電部に追加回路を組みこんで、ループアンテナの持つリアクタンスをバタワースLPF(ローパスフィルター)の一部品とすることで、中波の全体域をそのまま平坦な特性で取り出すことを検討してみました。参考にした文献は、前回紹介させていただいたこれです。 RLCフィルターの世界は、古典中の古典で、既に設計を容易にするための、正規化されたパラメーター表等が大昔から用意されています。具体的な計算については、ネットで見つけたかなり前から存在しているLCフィルタ設計技法を参考にしました。インターネットは本当に便利です。
”机上”設計回路図とLTSpiceでおこなったAC解析結果を示します。LPFのカットオフ周波数は2[MHz]としました。見事に2MHzで3dBダウンしているLPFができあがりました。LPF名ので、長波帯から中波帯まで平坦な周波数特性になっています。LPFの出力は例えばボルテージフォロワ等の能動回路で受ける必要があります。中波帯域をうまくカバーするために、フィルターの特性インピーダンス(Zo)を250[Ω]にしなければなりませんでした。LPFの出力は例えばボルテージフォロワ等の能動回路で受ける必要があり、その場合、受信電圧はアンテナのオリジナルなものより6dBダウンしたものになります。そのため、プリアンプの併用は必要になってくるでしょう。また、ボルテージフォロワを使わずにインピーダンス整合トランスを用いて50Ωにインピーダンス変換する方法もあると思いますが、さらに損失が増える場合は低雑音のプリアンプの使用を別途検討することになろうかと思います。プリアンプの利用は中波DXでは珍しいことではないし、DX EngineeringのRPA-1等の特性の良いプリアンプもあることから、プリアンプの検討はここではペンディングとします。とにかく、ループアンテナごと給電回路の一部とみなして、LPFを構築し、およそ2MHzの幅の中波帯域の信号を分け隔てなく取得することが「机上検討上」はできることがわかったわけです。(デルタループアンテナのアンテナ利得特性をそのまま活かすことができるという意味)
ただ、あくまでも今回は、「机上」検討結果です。中波とは言え、周波数はMHzオーダーの信号を取り扱うため、実回路を組んだ時に、ストレーキャパシタンス等の部品として見えない部品が悪さをし、思ったような特性が実はとれないといったことも予想されます。しかし、先に紹介した論文では実際に実回路での評価もしており、ほぼ良好な結果が短波帯で得られていることから、うまく回路を組んでやることで実用的なものができると大いに期待しているところです。ただ、あまりこの論文以外に、世の中の記事でこういった整合方法を見たことがないので(私だけがただ知らないだけかもしりませんが)ちょっと心配でもあります。また、特性インピーダンスとして250Ωの終端抵抗が入っていることから、この抵抗が出す雑音も気になるところです。この辺は実際に屋外で受信実験等して、受信フィーリングを確かめてみるのが良さそうです。本日はここまでとします。私の勘違い等ありましたら、優しくご教授いただければ幸いです。(続く)
Fig.1 Output impedance of a small delta loop antenna |
通常、こういったコイルからなるアンテナを受信機に接続する場合の「定石」は、皆さんご存知のとおり、直列に可変キャパシタンスを挿入して、直列共振回路を組み、リアクタンス成分をキャンセルして全アンテナ起電力をごっそり得ることになるわけですが、共振回路のQが高い程、その「ごっそり得る」ことが出来る周波数は共振周波数近傍の極限られた範囲に限定されます。すなわちSDRで中波帯域丸ごと記録する場合には不向きです。
そこで、ループアンテナの給電部に追加回路を組みこんで、ループアンテナの持つリアクタンスをバタワースLPF(ローパスフィルター)の一部品とすることで、中波の全体域をそのまま平坦な特性で取り出すことを検討してみました。参考にした文献は、前回紹介させていただいたこれです。 RLCフィルターの世界は、古典中の古典で、既に設計を容易にするための、正規化されたパラメーター表等が大昔から用意されています。具体的な計算については、ネットで見つけたかなり前から存在しているLCフィルタ設計技法を参考にしました。インターネットは本当に便利です。
”机上”設計回路図とLTSpiceでおこなったAC解析結果を示します。LPFのカットオフ周波数は2[MHz]としました。見事に2MHzで3dBダウンしているLPFができあがりました。LPF名ので、長波帯から中波帯まで平坦な周波数特性になっています。LPFの出力は例えばボルテージフォロワ等の能動回路で受ける必要があります。中波帯域をうまくカバーするために、フィルターの特性インピーダンス(Zo)を250[Ω]にしなければなりませんでした。LPFの出力は例えばボルテージフォロワ等の能動回路で受ける必要があり、その場合、受信電圧はアンテナのオリジナルなものより6dBダウンしたものになります。そのため、プリアンプの併用は必要になってくるでしょう。また、ボルテージフォロワを使わずにインピーダンス整合トランスを用いて50Ωにインピーダンス変換する方法もあると思いますが、さらに損失が増える場合は低雑音のプリアンプの使用を別途検討することになろうかと思います。プリアンプの利用は中波DXでは珍しいことではないし、DX EngineeringのRPA-1等の特性の良いプリアンプもあることから、プリアンプの検討はここではペンディングとします。とにかく、ループアンテナごと給電回路の一部とみなして、LPFを構築し、およそ2MHzの幅の中波帯域の信号を分け隔てなく取得することが「机上検討上」はできることがわかったわけです。(デルタループアンテナのアンテナ利得特性をそのまま活かすことができるという意味)
Fig.2 Feeding circuit employing a Butterworth filter |
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